[2009-02-27]メールマガジン第22号


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月刊ディペンダビリティ&テスト(D&T)ニュース  2009年2月27日号
発信元 シリコン・テスト・テクノロジーズ株式会社
http://www.silicontest.jp/
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テスト技術略語・ミニ解説集 http://www.silicontest.jp/abbreviations
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--- 目次 -----------------------------------------------------------
●【ビジネスニュース】SEAJ年頭所感 経済産業省米村猛課長
●【最新技術動向】FTC,DC
●【図書紹介】下流大学が日本を滅ぼす
(新連載)
●【チュートリアル連載記事】ディペンダビリティ講座(第1回)福本聡
●【チュートリアル連載記事】故障解析技術講座(第14回)佐藤康夫
●【経済指標】SEAJ BBレシオ
●【編集後記】


---【ビジネスニュース】SEAJ年頭所感 --------------------------------
SEAJ Journal 2009年1月号
http://www.seaj.or.jp/publication/journal/journal_new.html

経済産業省製造産業局産業機械課長の米村猛氏による平成21年年頭所感が掲
載された.厳しい経済状況を踏まえた上で,下記事項について重点的に取り
組むことが説明されている.

(1)	資源生産性の抜本的向上
(2)	イノベーションの強化
(3)	世界市場の獲得を見据えたグローバルな戦略
(4)	中小企業・小規模企業の活性化
(5)	機械産業の発展に貢献する人材の確保・育成

詳しくは上記ジャーナルを参照されたい.


---【最新技術動向】FTC研究会 ---------------------------------------
第60回FTC研究会が,2009年1月29日から31日まで,山形県羽咋郡,ウェルサ
ンピア山形で開催された.100年に1度といわれる経済状況の中,企業からの
参加者は減少したものの,計47名の参加が得られた.

本会は1978年の発会から30年の節目を迎え,今回から高松雄三教授(愛媛
大)を会長,梶原誠司教授(九工大)を代表幹事とした新体制のスタートと
なった.

次の全6セッションにおいて計12件の発表が行われた.

1月29日
    セッション1 ディペンダブルシステム
30日
    セッション2 故障判定
    セッション3 設計技法
    セッション4 BIST
    セッション5 特別講演
31日
    セッション6 回路劣化,コンピュータの歴史

セッション5では,今春退官される高松教授から「ナノメータLSIのテストと
故障診断について」と題して,ご自身の研究歴を振り返りつつ,ポストBIST
故障診断や,今後のナノメータLSIテストに関する最新の成果と展望を紹介
する講演があった.

第61回となる次回は,2009年7月16-18日に三重県伊勢で開催される予定であ
る.会場は,当初予定していた施設が廃止されたため,奥伊勢フォレストピ
アに変更されている.参加を予定されている方は注意されたい.
(大原 衛)


---【最新技術動向】DC研究会 ----------------------------------------

http://www.ieice.org/iss/dc/jpn/

2009年2月16日(月),機械振興会館にて電子情報通信学会ディペンダブル
コンピューティング(DC)研究会が開催された.テスト生成(3件),高速・
高信頼化設計(2件),欠陥ベーステスト(3件),スキャンテスト・テスト
容易化高位合成(3件),合計11件の講演があった.参加者は約40名であり,
VLSIのテスト,ディペンダブルコンピューティング,セキュリティ等に関し
て熱心な討論がおこなわれた.

11件の講演のうち10件は大学(+大学)からであり,1件は大学+企業から
であった.企業からの参加者が少なかったのは残念であった.

3月のDC研究会は,“組込技術とネットワークに関するワークショップ 
ETNET2009”として,3月5日と同6日に佐渡島開発センターで開催予定である.

4月のDC研究会は,電子情報通信学会コンピュータシステム(CPSY)研究会
と共催で,4月21日に首都大学東京秋葉原サテライトキャンパスにて開催予
定である.
(岩崎一彦)


---【図書紹介】下流大学が日本を滅ぼす ------------------------------
著者: 三浦展(みうら あつし)
書名: 下流大学が日本を滅ぼす
出版社: ベスト新書

第1章 大学がバカ学生を大量生産する
第2章 お客様化する学生とモンスター・ペアレンツ
第3章 バカ学生は社会では通用しない
第4章 「大学貧乏」の登場
提言  オンライン大学で下流脱出を

“知り合いの大学の先生方と会うと必ず,最近の学生は困ったもんだという
話になる.当然だろう.今や・・・”

これが本書の書き出しである.著者は「下流社会」で話題となった三浦展
(みうらあつし)氏である.本書には「証言」が多数収録されており,たぶ
ん本当の話だろう.しかし,著者自身も認めているように,十分な裏付けの
もととは言い難く,一部に事実誤認もあるように思われる.もう少しポジテ
ィブに考えてあげてもよいと思う.

とはいえ,なるほどと思う意見や考え方も示されており,一読の価値はある
だろう.ご家族の進学(中学,高校,大学,大学院)や学卒採用の際の参考
となるかもしれない.

アマゾンでの購入(1500円以上送料無料)は下記を参照されたい.
http://www.silicontest.jp/
(岩崎一彦)


---【チュートリアル連載記事】 --------------------------------------
■ ディペンダビリティ講座(第1回) ■

近年,"フォールトトレランス","信頼性","安全性"などの概念を包括する
"ディペンダビリティ (dependability)"が重要視されています.この講座で
は,ディペンダビリティ技術の基礎をできるだけ解りやすく解説したいと思
います.

まずはじめに,ディペンダビリティを定量的に取り扱うための基礎数理につ
いて述べることにします.それは,多くの信頼性理論やフォールトトレラン
ス技術の解説書と同様に,半導体やシステムの寿命のバラツキを表す時間分
布や故障率の話からはじめることになります.

しかし,そのような時間分布や故障率を表す数式の議論について,"どうも
スッキリしない"とか"表面的には理解できるが,本質的なところはどうも…
"といった声をしばしば耳にします.

具体的に言えば,"時間分布の確率密度関数と呼ばれる量 f(t) と瞬間故障
率と呼ばれる量 λ(t) はどちらも時刻 t における故障の発生しやすさを表
す量のようだが,そもそもなぜ同じような量が二つも存在するのか?"とい
う疑問などです.ここでは,これらの量の出どころをできるだけ明確にする
ことで,議論の見通しを良くするつもりです.

ディペンダビリティの見積もりの対象となる電子部品や機能モジュール,シ
ステムなどを総称してアイテム (item) と呼びます.こうしたアイテムの寿
命のモデルを,故障率を導入することから考えましょう.

まず,寿命を測る時間を離散時間として話をはじめます.すなわち,アイテ
ムの故障を1秒ごと,1分ごと,1日ごとというような単位時間ごとに発生
する事象としてとらえます.例えば,1日を単位時間とするならば,故障率
はある1日のあいだにアイテムが故障する確率となります.

その上で,話を簡単にするため,はじめに最も単純かつ重要な寿命のモデル
を取り上げることにします.

いま,サイコロを振るゲームを思い浮かべてください.サイコロを振って1
の目が出ればゲームを終了し,1以外の目が出ればふたたびサイコロを振る
という操作を繰り返します.このゲームが終了するまでの時間,すなわちゲ
ームの寿命を,サイコロを振る回数と考えれば,それはサイコロの1の目が
出る確率に支配されていることが解ります.

アイテムの寿命もこのようなサイコロを振るゲームでモデル化することがで
きます.あるアイテムがその日(他の単位時間でも可)故障するかしないか
は,神様がサイコロを振って決めていると考えれば良いのです.ただし,サ
イコロの1の目が出る確率は1/6 とは限らず,一般の確率の値 p ( 0 < p 
< 1 ) です.

この確率 p こそがアイテムの故障率です.その値が常に一定なら,神様は
毎日同じサイコロを振っていることになります.

果たしてそのサイコロが本当に毎日同じと考えてよいのかどうは,アイテム
の種類や対象とする期間によって異なります.

人間の寿命を例にとれば,われわれの日常の毎日には交通事故や急病など,
死に至る可能性が潜んでいるわけですが,多くの人は昨日より今日の方がそ
の可能性が高いとか逆に低いとか感じてはいないでしょう.つまり,神様が
振るサイコロは毎日同じであると思われるわけです.

しかし後ほど述べるように,非常に長い期間,例えば生後間もない頃から老
年期まで含めた期間で考えれば,サイコロははじめからおわりまですべて同
じとは考えられないでしょう.工業製品などのアイテムでもおおまかな傾向
は同様です.ただ,終始同じサイコロと見なして良いことが統計的に知られ
ているものもあります.蛍光灯などがそれです.

ともあれ,一定の故障率 p で寿命をモデル化したとき,数理的には最も簡
単な形が得られます.アイテムの寿命,すなわち故障が発生するまでの時間
は確率変数 (random variable),つまり特定の確率分布 (probability 
function) に従う量となります.故障率が一定ならその確率分布は簡単に求
めることができます.時刻 1 からある時刻 k-1 まで故障することなく,時
刻 k で故障する確率  f(k) は,その意味からただちに

   f(k) = p*(1-p)^{k-1}

となることが解ります.これは,幾何分布 (geometric distribution) の確
率関数 (probability function) と呼ばれます.さらに,時刻 k までに故
障している確率 F(k) は

   F(k) = f(1) + f(2) + ... + f(k) = 1 - (1-p)^k

となります.これが,幾何分布の累積分布関数 (cumulative distribution 
function) または確率分布関数 (probability distribution function) と
呼ばれるものです.

以上から解るとおり,常に単位時間当たり一定の故障率で寿命をモデル化す
ることは,故障までの離散時間分布に幾何分布を仮定することに他なりませ
ん.したがって,寿命の平均や分散など諸量は幾何分布のそれからすぐに得
られます.例えば平均は 1/p となります.

故障率が常に一定であるということは,故障率が時間経過に依存しないとい
うことです.このことは"無記憶性 (memory-less property)"という言葉で
表現されます.幾何分布は無記憶性を持つ唯一の離散時間分布なのです.

<以下,次回に続く>
(福本 聡)


---【チュートリアル連載記事】 --------------------------------------
■  故障解析の基礎知識(第14回)  ■

故障欠陥モデルを用いた故障診断の処理フローを図に示す.ややこしいが考
え方を説明するので,本質をつかんで欲しい.
http://www.silicontest.jp/mailmagazine/090227/fig2.htm

【1】	欠陥モデルでの故障診断は処理時間が大きいので,調べる候補を絞
り込む必要があり.そこで通常の縮退故障モデルの故障診断で候補とされた
ものについて調べる((1),第3回と第4回を参照).「テスタ観測動作」と
「候補動作」が完全に一致すれば,縮退故障モデルで故障が完全に説明でき
る.そこで両者が一致しない場合,すなわち「誤予測」がある候補に対して
本手法を適用する((2),第5回を参照).

【2】 着目する故障候補ノードの論理値が「テスタ観測動作」から1に見え
るテストベクタと,0に見えるテストベクタを抜き出す((5),第4回を参照)
.これで,どういうテストベクタで1になるか,またどういうテストベクタ
で0になるか,が把握できたことになる.

(注:通常の故障診断のようにパス/フェールには着目していないことに注
意のこと.欠陥があることと,あるテストベクタに対してフェールすること
は必ずしも一致しない.むしろ偶然かも知れない.大事なのは,どういう条
件の時に1,どういう条件の時に0になるかである.従って本手法では,パス
したテストベクタも重要な情報を与えるので分析の対象としている.)

【3】 想定している欠陥のモデルに対して【2】で求めた各テストベクタを
与えて着目ノードの電位(論理値)を計算して「テスタ観測動作」と一致す
るかを検証する((6),(7)).例えばセル内のショート故障を疑っていると
きは,回路図に抵抗を挿入し,回路シミュレーションを行う.あるいは第13
回に紹介したような配線の完全オープン故障を疑う場合は,隣接配線との容
量値をレイアウト情報より計算し,着目ノードの電位は1を持つ隣接線との
容量合計値と,0を持つ隣接配線との容量合計値を用いて,按分することに
より求める(6).

ここでショートならばその抵抗値はどうするか,完全オープン故障ならば製
造時に着目ノードに留まっている初期電荷の値をどうするかという本質的な
問題がある.すなわち欠陥モデルは値の分からないパラメータ値を持ってい
る.ここでは詳細は省略するが,着目ノードの電位が「テスタ観測動作」と
一致させることのできるパラメータが存在するか否かの観点で調べていく
(7).

【4】 こうして求めた故障候補は真の故障箇所の可能性を検証しただけなの
で,それらの中で最も可能性の大きそうな候補から選んでいく(8).

今回は相当理屈っぽい説明になってしまって申し訳ない.筆者らは
International Test Conference2002で完全オープン故障に関する故障診断
を報告したが,その後に類似の手法の開発を進めるにつれ,今回説明したよ
うな方法論に基づいていることを再認識し,Asian Test Symposium2005の発
表に繋がった.その論文には具体例をいくつか書いたが,ここでは省略し,
雰囲気だけをお伝えした.

(佐藤 康夫)


---【経済指標】-----------------------------------------------------
SEAJ BBレシオ 1月度:0.55
半導体製造装置協会から転載:http://www.seaj.or.jp/
月次経過:http://www.silicontest.jp/mailmagazine/090227/fig1.htm


編集後記 -----------------------------------------------------------
花粉のシーズンが始まってしまいました.今年は,初めて花粉症の薬を処方
してもらいました.これが効いて,いつもどおりの生活が送れて感動してお
ります.弊社も花粉症の薬のような働きができるよう精進してまいりたいと
思います.
(市野憲一)

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