[2009-05-28] D&Tニュース 第25号



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月刊ディペンダビリティ&テスト(D&T)ニュース  2009年5月28日号
発信元 シリコン・テスト・テクノロジーズ株式会社
http://www.silicontest.jp/
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テスト技術略語・ミニ解説集 http://www.silicontest.jp/abbreviations
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--- 目次 -----------------------------------------------------------
●【ビジネスニュース】パッケージ・コラボ
●【最新技術動向】VTS,WTW
●【チュートリアル連載記事】ディペンダビリティ講座(第4回)福本聡
●【チュートリアル連載記事】故障解析講座(最終回)佐藤康夫
●【経済指標】SEAJ BBレシオ
●【編集後記】


---【ビジネスニュース】パッケージ・コラボ --------------------------
半導体産業新聞 第1840号 2009年5月20日発行

IBM社が提唱するパッケージ分野でのコラボレーション構想が報道された.
動機として,テスティングを含むパッケージコストの増加が指摘されている.
米ガートナー社によるとパッケージ・テストは製造コストのうち,2008年で
約18%,2011年には20%を超えるとしている.TSV(シリコン貫通ビア)と
関連する技術の共同開発が計画されている.

詳しくは同新聞を参照されたい.ホームページは以下の通りである.
http://www.semicon-news.co.jp/


---【最新技術動向】VTS --------------------------------------------
2009年5月4日から6日まで,アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタクルー
ズ郊外のSeaScape Resortにおいて,VLSI Test Symposiumが開催された.
http://www.tttc-vts.org/

16件の通常セッション(発表数50)の他,7件のIP (Innovative Practice)セ
ッション,10件の特別セッション (パネル等)が企画された.
通常セッションの発表における第一著者の国別機関別内訳を以下に示す.日
本からは2件の発表があった.
http://www.silicontest.jp/mailmagazine/090528/fig2.htm

基調講演は米国PDF Solution社のJ. Kibarian氏.微細化に伴うプロセスば
らつきの増加によって,新プロセス立ち上げのリスクが増大している.この
対策として,より規則性の高いプラットフォームを使用することの利点が示
され,同社のソリューションであるpdBRIXが紹介された.

基調講演に続き,カナダSimon Fraser大のB. Kaminska教授による招待講演
があった.センサ,アクチュエータ,RF回路等をフレキシブルな基板上に集
積したHeterogeneous Microsystemsの概要と,その生体モニタとしての医療
分野への応用について示されるとともに,これら新デバイスのテストにおけ
る課題への取組みが紹介された.

昨年に引き続き,遅延テスト関連の話題が2.5セッションと最も多かった.
基調講演以外に,特別セッション (New Topic)としてプロセスばらつきに関
する1時間半の講演があり,その影響が注目されているようである.

不況に加え,新型インフルエンザの影響もあり,参加者はかなり少なかった
ようである.また,発表キャンセルも相次いでいた.特に,日本企業からの
参加者は0であった.

会場写真他
http://www.silicontest.jp/mailmagazine/090528/vts-photo.htm

(新井 雅之)


---【最新技術動向】WTW ---------------------------------------------
VTSの前日(5月3日),同じホテルにおいてサテライトワークショップ
Workshop on Test of Wireless Circuits and Systems (WTW)が開催された.
http://www.wtw2009.tec.ufl.edu/

約20名程度が参加した.昨年はWTWおよびSDDの2件のワークショップが開催
されていたが,今年は1件だけであった.1件の基調講演,1件の招待講演,2
件のミニチュートリアル,1件のパネル,5件の発表があり,約20名程度が参
加した.

基調講演はインテルのフェローであるK. Soumyanath氏によるもので,複数
のRF回路を集積した新世代のデバイスの可能性と,そのテストの課題につい
て紹介された.

招待講演はRoos Instruments社のM. Roos氏で,車載レーダやPAN 
(personal area network)など,ミリ波(>20GHz)の可能性について示され,
このようなデバイスの測定環境について紹介された.

(新井 雅之)


---【チュートリアル連載記事】 --------------------------------------
■ ディペンダビリティ講座(第3回) ■

前回は,アイテムの故障率が時間の経過にかかわらず一定と考えて,すなわ
ち,アイテムの寿命をあらわす確率分布が幾何分布であると仮定して,基本
的な信頼性評価尺度について述べました.今回は,個別のアイテムから構成
されるシステムの信頼性について考えます.引きつづき,各アイテムの故障
率はいつも一定とします.

システム全体が n 個のアイテムから構成され,それらのアイテムが一つの
無駄もなく,それぞれシステムの機能を維持する上で欠くべからざる役割を
持っている場合を考えましょう.そのような構成は直列システムと呼ばれま
す.このシステムでは,個々のアイテムの故障は直ちにシステム全体の故障
に結びつきます.通常,以下のような概念図で直列システムの構造を表しま
す.
http://www.silicontest.jp/mailmagazine/090528/series-system.htm

個々のアイテムの(ステップ当たりの)故障率を p_1, p_2, ... , p_n と
すれば,それぞれが時刻 k まで故障していない確率,すなわち信頼度は,

R_1(k) = (1 - p_1)^k,
R_2(k) = (1 - p_2)^k,
... ,
R_n(k) = (1 - p_n)^k

となるのは前回述べたとおりです.それでは,システム全体の信頼度 R(k) 
はどうなるでしょうか?システム全体として,時刻 k まで故障せずに機能
するためには,すべてのアイテムが時刻 k まで故障していないことが条件
になります.したがって,R(k) は各アイテムの信頼度の直積

R(k) = (1 - p_1)^k * (1 - p_2)^k * ... * (1 - p_n)^k
= {(1 - p_1) * (1 - p_2) * ... * (1 - p_n)}^k

で表されることになります.

さて,ここですべてのアイテムの故障率が等しい場合を考えましょう.つま
り,p_1 = p_2 = ... = p_n の場合です.システム全体の信頼度は,より簡
単になり,

R(k) = {(1 - p)^n}^k = {1 - n*p + o(p)}^k

で記述されます.ここで,o(p) (スモール・オー・p)は p の2次以上の
項をまとめて表しています.さらに,p および n*p が 1.0 よりも十分に小
さければ,o(p) は無視できて,システム全体の信頼度は

 R(k) = (1 - n*p)^k

となります.このことから,個別アイテムの故障率 p に対応してシステム
全体の故障率が n*p となることがわかります.したがって,システム全体
のMTTF も 1/(n*p) でおおまかに計算できます.簡単な例を取り上げてみま
しょう.

今から63年前に開発された,世界初のデジタル計算機 ENIAC は 17,468 本
の真空管で構成されていたそうです.この時代の情報通信システムの寿命を
決定付けていたのは真空管で,その他の抵抗器やコンデンサなどの寿命は相
対的に無視できる状況でした.そのため,定格よりもはるかに低い電圧で使
用したり,電源を入れっぱなしにして安定状態を保ったりして,運用的に真
空管の長寿命化が図られました.具体的には,故障率でいえば,1時間当た
り 10^{-6} 程度と,真空管としてはかなり低い値を実現していたようです.
さて,これらから ENIAC のシステム全体としての故障率は

n*p = 17468 *10^{-6} = 0.0174

となります.また,MTTF は 

1/0.0174 = 57 [時間] = 2.4[日間] 

と算出されます.これでも,当時の技術水準からいえば,極めて高い信頼性
のレベルにあったそうですが,ENIAC のオペレータがたびたび真空管の交換
に追われていたというのはどうやら確かなようです.

<以下,次回に続く>

(福本 聡)


---【チュートリアル連載記事】 --------------------------------------
■  故障解析技術講座(第15回)  ■

故障診断を中心に故障解析技術を長らく話してきた.これまでお付き合い願
った読者には心から礼を申しあげたい.

故障診断は故障チップの故障位置を,テスタでの測定情報と設計情報からソ
フト的に推定するツールとして広く用いられるようになってきた.特に最近
の大規模LSIでは,スキャン設計なしに高検出率のテストパターンを作成す
ることは困難になっているので,スキャン設計に対応する故障診断は強力な
武器となる.

ただ我々は現実をよく見る必要がある.市場でフェールした故障チップを解
析するとき,まずLSIテスタではフェールしないという問題に突き当たる.
テストパターンの網羅性が低いのか,テスト条件が緩いのか,あるいはスキ
ャンテストと実動作の間に何か差があるのか,様々な理由が考えられる.ま
た仮にテスタでの故障再現化に成功したとしても,故障診断の故障位置推定
精度が十分高いとは言い難いこともある.本稿ではレイアウトや回路情報も
活用して故障位置指摘精度を向上する手法も紹介したが,LSIテスタから得
られる情報には限りがあり,いつもうまくいくとは限らない.

最近では信頼性に関する問題も議論されるようになってきた.NBTI(負バイ
アス温度不安定性)やHCI(ホットキャリア注入効果), TDDB(酸化膜経時破
壊)などのトランジスタ劣化や,エレクトロマイグレーション,あるいはス
トレスマイグレーションなどの配線劣化が,市場での信頼性低下要因として
大きな問題になりつつあるが,これらを事前にLSIの生産テストで検出する
のは困難と思われる.新たなアプローチが必要となりつつある.

我々の最終目的は,市場でのLSIの信頼性を保証することであり,故障解析
は重要であるけれども,もっと多角的に問題に取り組むべきではないだろう
か? 本稿を閉じるにあたり,以下の項目がさらに研究開発され,実用化さ
れるべきと訴えたい.逆説的に言えば,故障解析を不要にすることを究極の
目的にする技術かも知れない.

(1) 解析考慮設計(Design For Diagnosis, Design For Debug)
(2) 信頼性設計(Design For Reliability)
(3) オンラインテスト(On-Line Test)

(1)は,出来がったチップが不都合動作をしたときに,その情報を取り出せ
る仕組みである.スキャン設計はその意味で十分ではない.何故なら,実動
作状態ではスキャン動作を行えないからで,最初の段落で述べた市場でフェ
ールした故障チップを解析するとき,LSIテスタで再現させないといけない
問題に行き着く.実動作状態での生の情報を取得できる仕組みが重要である.

(2)は,回路に冗長性を持たせるとか,設計マージンを十分持たせるとかの
観点からは,今でもある程度は考慮されているが,それだけでは回路がいた
ずらに大きくなり,コスト的に得策ではない.故障モデルのように劣化をモ
デル化し,生産テスト(バーンイン/ストレステスト)及びフィールドでの
テストで扱うことが必要となろう.

(3)は,実動作状態でのモニタを行うテストである.昔からパリティチェッ
クなどの技術は適用されてきたが,考え方としては同じである.もっと汎用
的な手法が望まれる.例えば,実動作状態で発生するノイズやソフトエラー
は,生産テストで予測するのは困難である.最近,こうした分野に関する研
究開発も始まっている.私が議論した海外の研究者の中には,将来はオンラ
インテストの方が生産テストより重要になろうと出張した人もいた.これは
極論としても,生産テストの限界を見極め,新たな道を歩き始める時代に来
ているのではないだろうか? スキャンテストが1960年代に始まって半世紀
が過ぎようとしている.この間,半導体の設計や製造技術には信じられない
位の革新があった.テスト・解析技術の次の革新へ向かって知恵を出して行
こう.

(九州工業大学 佐藤康夫)


*編集部より:

佐藤康夫氏には創刊以来2年間にわたり時宜を得た寄稿を賜り,たいへん好
評でした,改めて感謝申し上げます.また,九州工業大学での益々のご活躍
をお祈りします.
(岩崎一彦)


---【経済指標】-----------------------------------------------------
SEAJ BBレシオ 4月度:0.44
半導体製造装置協会から転載:http://www.seaj.or.jp/
月次経過:http://www.silicontest.jp/mailmagazine/090528/fig1.htm


編集後記 -----------------------------------------------------------
新型インフル騒動の中,VTSに行って来ました.日本では大騒ぎをしている
のにサンフランシスコでは誰もマスクをしておらず,"今なら空港で誰が日
本人かすぐ分かる"とアメリカ人に冗談を言われました.帰りの飛行機では
到着後に機内検疫があり,問診やサーモグラフィの撮影など,30分以上足止
めをくらいました.弱毒性とのことですが,皆様どうぞお気を付け下さい.
(新井雅之)

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