[2010-04-30] D&Tニュース 第36号


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月刊ディペンダビリティ&テスト(D&T)ニュース  2010年4月30日号
発信元 シリコン・テスト・テクノロジーズ株式会社
http://www.silicontest.jp/
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テスト技術用語集 http://www.silicontest.jp/abbreviations
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--- 目次 -----------------------------------------------------------
●【ビジネスニュース】明治大学寄付講座
●【最新技術動向】DC研究会,D2T講演会
●【図書紹介】望楼の春
●【チュートリアル連載記事】ディペンダビリティ講座(第11回)福本聡
●【編集後記】


---【ビジネスニュース】明治大学寄付講座 ----------------------------
半導体産業新聞 第1886号 2009年4月21日発行

米国の製品安全試験・認証機関アンダーライターズ・ラボラトリーズ(日本
法人ユーエル・ジャパン(株))は,明治大学に寄付講座“安全学入門”を
開設した.この講座は,製品安全分野を含め広く安全全般について精通した
人材の育成を目的としている.

理工学研究科の大学院科目“安全学特論I”を一般に公開するもので,同大
学の向殿政男教授がカリキュラムを組んでいる.

詳しくは同新聞を参照されたい.ホームページは以下の通りである.
http://www.semicon-news.co.jp/


---【最新技術動向】DC研究会 ----------------------------------------
http://www.ieice.org/iss/dc/jpn/

2010年4月13日,東京工業大学大岡山キャンパスTokyo Tech Frontにおいて,
電子情報通信学会ディペンダブルコンピューティング研究会が開催された.
例年4月の研究会はコンピュータシステム研究会との共催となっており,デ
ィペンダブルシステム,ディペンダブルアーキテクチャおよび仮想化をテー
マに活発な議論が行われた.

招待講演として,国立情報学研究所/東京工業大学の米田友洋教授教授によ
る"非同期計算に基づくディペンダビリティ向上へのアプローチ"と題する講
演があった.論理回路の高速化技術として期待される非同期式計算について,
まずその原理についての紹介があり,次にソフトエラーやNBTIによる遅延に
対する耐故障性,耐劣化性技術について示された.

6件の一般公演のうち,テスト関連の話題として,BILBOとソフトエラー耐性
の機能を統合した新しいFF構成に関する千葉大の発表があった.

次回のDC研究会は,"設計/テスト/検証"をテーマに,6月25日に機械振興会
館にて開催予定である.

(新井雅之)


---【最新技術動向】D2T講演会 ---------------------------------------
http://www.vdec.u-tokyo.ac.jp/d2t/D2Tseminar2010.html

東京大学VDEC D2T講演会が,2010年4月13日午後,同センターのセミナー室
で開催された.設計検証に関する下記3件の講演がおこなわれた.約30名が
参加し,質疑応答も活発であった.

招待講演
Verification of Embedded Software in Industrial Microprocessors
Eli Singerman (Intel Israel)

講演1
Pre- and Post-Silicon Verification and Debugging with High Level 
Design
Masahiro Fujita (University of Tokyo)
講演2
On the Validation of Embedded Systems through Functional ATPG
Giuseppe Di Guglielmo (University of Verona / University of Tokyo)

(岩崎一彦)


---【図書紹介】歌集 ------------------------------------------------
著者:坂井修一
書名:望楼の春
出版社:角川書店

作者の坂井修一先生は東京大学大学院情報理工学系研究科教授であり,情報
処理学会理事,電子情報通信学会コンピュータシステム研究会委員長など多
くの要職を務め,情報工学の分野で我国を代表する研究者である.

同時に,先生は著名な(私は無教養で最近まで知らなかった)歌人でもあり,
上記歌集は第7集となるそうである.この歌集に対し,権威ある迢空賞が贈
られることとなった(平成22年4月10日朝刊各紙).

まさに文武両道,完全に脱帽である.

傍目には恵まれているように見える東大教授にもご苦労が多いと感じ,気力
と体力に心から敬意を表す.本当のことを言っていいのかな,勇気があるな
と,感心している.多くの技術者にとっても共感できる作品が多数収録され
ていると思う.

差障りのなさそうな作品をいくつか紹介する.

・もつともつと異端になれといふこゑす机の上の極楽鳥花 (俗)

・いまのこたへは脊髄反射のやうだつた つひに昆虫となってしまうか(黄
砂)

・ぷつすんと消えてうごかぬパソコンよときどきわれもやつてみたいぞ(お
堀)


アマゾンでの購入(1500円以上送料無料)は下記を参照されたい.
http://www.silicontest.jp/

(岩崎一彦)


---【チュートリアル連載記事】---------------------------------------
■ ディペンダビリティ講座(第 11 回) ■

前回は,符号の誤り検出・訂正能力の限界を表す最小距離を評価するうえで,
線形符号が都合の良い性質を持っていることを述べました.今回は,具体的
な符号を例にして,誤り検出・訂正と最小距離の関係について説明します.

既に述べたように,通信の高信頼化のために創案された符号理論は,通信に
先駆けてコンピュータシステムの内部で実用化されてきました.メモリシス
テムへの応用もその好例です.メモリに書き込むべき基のデータを送信語と
して符号化し,逆に,メモリから読み出されたデータを受信語として基のデ
ータへ復号化します.データバスやメモリチップを誤りの発生しうる通信路
と見なすわけです.

多くのメモリシステムでは,単一誤り訂正・二重誤り検出(SEC-DED, 
single error correction and double error detection)を前提した符号が
用いられています.すなわち,1 ビットの誤りが発生したときにはそれを修
正し,2 ビットの誤りが発生したときにはそれを検出するという符号です.
例えばつぎのような,符号長 7 で,八つの符号語 v_0 ~ v_7 を持つ符号
を考えましょう.

v_0 = 0000000
v_1 = 1110100
v_2 = 0111010
v_3 = 0011101
v_4 = 1001110
v_5 = 0100111
v_6 = 1010011
v_7 = 1101001

この八つの符号語に,転送すべき基のデータをどのように割り付けるかは様
々ですが,符号長 7 ビットで八つの符号語を構成しているわけですから,
情報ビット数は k = log_2(8) = 3 ビットとなります.すなわち,符号化効
率は R = 3/8 = 0.375 であり,前回までに紹介した符号よりも,コストの
観点から言えばかなり劣っていることになります.逆にいえば 7 ビットの
うちの 4 ビットが検査ビットですから,そのぶん誤り検出・訂正能力が高
いことが期待できます.

この符号の二つの符号語 v_1 と v_2 の和(ビット毎の排他的論理和)は,

v_1 XOR v_2 = (1110100) XOR (0111010) = 1001110 = v_4

となります.同様にして,任意の二つの符号語の和をとると表 1 のように
まとめられます.
表1: http://www.silicontest.jp/mailmagazine/100430/XOR_Results.htm

この表から,任意の二つの符号語の和が,この符号のまた別の符号語になっ
ていることが解ります.そして,符号語 v_0 はすべてのビットが 0 ですか
ら,この符号は前回の定義から線形符号となります.したがって,前回の考
察から,この符号の最小距離は上記の符号語のハミング重みの 0を除く最小
値であるということになります.v_1 から v_7 のハミング重みは何れも 4 
であることから符号の最小距離は 4 です.

前回示した定理によれば,1 ビットの誤りを訂正するには最小距離が少なく
とも 1*2+1 = 3 以上の大きさである必要があり,2ビットの誤りを検出する
には最小距離が少なくとも 2+1 = 3 以上の大きさである必要があるという
ことになります.この符号の最小距離 4 はこれらの条件を満たしています
から,単一誤り訂正・二重誤り検出の特性は実現できそうです.

ここでは,データをメモリに書き込む側(符号語を送信する側)が,八つの
符号語の何れかを送信すると考えます.そして,データをメモリから読み出
す側では,誤りを含む可能性のある 7 ビットの語を受信し,それを最もハ
ミング距離の近い符号語に対応付けるといったアルゴリズムを前提にして,
復号化するものとします.

いま,書き込み側が符号語 v_1 = 1110100 を送信し,1ビット誤りが発生し
て,読み出し側で v_x = 1100100 という符号語ではない語を受信したとし
ます.まず,符号語ではないので明らかに誤りの検出は可能です.さらに,
v_xと v_0, v_1, v_2, v_3, v_4, v_5, v_6, v_7 各々との和は

v_x XOR v_0 = (1100100) XOR (0000000) = (1100100)
v_x XOR v_1 = (1100100) XOR (1110100) = (0010000)
v_x XOR v_2 = (1100100) XOR (0111010) = (1011110)
v_x XOR v_3 = (1100100) XOR (0011101) = (1111001)
v_x XOR v_4 = (1100100) XOR (1001110) = (0101010)
v_x XOR v_5 = (1100100) XOR (0100111) = (1000011)
v_x XOR v_6 = (1100100) XOR (1010011) = (0110111)
v_x XOR v_7 = (1100100) XOR (1101001) = (0001101)

なので,各ハミング距離は 3, 1, 5, 5, 3, 3, 5, 3 です.つまり,v_x に
最も距離が近いのは v_1 であると特定できますから,誤り訂正も可能とな
ります.

今度は,書き込み側が符号語 v_1 = 1110100 を送信し,2ビット誤りが発生
して,読み出し側で v_x = 1110010 という符号語ではない語を受信したと
します.上記と同様,符号語ではないので誤りの検出は可能です. v_x と 
v_0,v_1, v_2, v_3, v_4, v_5, v_6, v_7 各々との和は

v_x XOR v_0 = (1110010) XOR (0000000) = (1110010)
v_x XOR v_1 = (1110010) XOR (1110100) = (0000110)
v_x XOR v_2 = (1110010) XOR (0111010) = (1001000)
v_x XOR v_3 = (1110010) XOR (0011101) = (1101111)
v_x XOR v_4 = (1110010) XOR (1001110) = (0111100)
v_x XOR v_5 = (1110010) XOR (0100111) = (1010101)
v_x XOR v_6 = (1110010) XOR (1010011) = (0100001)
v_x XOR v_7 = (1110010) XOR (1101001) = (0011011)

なので,各ハミング距離は4, 2, 2, 6, 4, 4, 2, 4 です.v_x に最も距離
が近いのは v_1, v_2, v_6 の三つであり,一つの符号語に特定することは
できません.したがって,前提のアルゴリズムでは誤り訂正はできません.

もし,3 ビット誤りが発生したらどうでしょうか.書き込み側が符号語 
v_1 = 1110100 を送信し,読み出し側で v_x = 1010010 という符号語では
ない語を受信したとします.やはり,符号語ではないので誤りの検出は可能
です.そして,v_x と v_0, v_1, v_2, v_3, v_4, v_5, v_6, v_7 各々との
和は

v_x XOR v_0 = (1010010) XOR (0000000) = (1010010)
v_x XOR v_1 = (1010010) XOR (1110100) = (0100110)
v_x XOR v_2 = (1010010) XOR (0111010) = (1101000)
v_x XOR v_3 = (1010010) XOR (0011101) = (1001111)
v_x XOR v_4 = (1010010) XOR (1001110) = (0011100)
v_x XOR v_5 = (1010010) XOR (0100111) = (1110101)
v_x XOR v_6 = (1010010) XOR (1010011) = (0000001)
v_x XOR v_7 = (1010010) XOR (1101001) = (0111011)

なので,各ハミング距離は3, 3, 3, 5, 3, 5, 1, 5 となります.この場合,
v_x に最も距離が近いのは v_6 であり,送信された符号は v_6 であると判
断されるため,前提のアルゴリズムでは正しく誤り訂正はできないことにな
ります.

このように,最小距離 4 の上記の符号は,単一誤りを訂正し,少なくとも
二重誤りを検出するという特性を満たしています.この符号は SEC-DEC ハ
ミング符号と呼ばれます.

<以下,次回に続く>
(福本 聡)


---【経済指標】-----------------------------------------------------
SEAJ BBレシオ 3月度:1.17
半導体製造装置協会から転載:http://www.seaj.or.jp/
月次経過:http://www.silicontest.jp/bbratio.htm


編集後記 -----------------------------------------------------------
森鴎外の小説“雁”の舞台となったのは無縁坂である.無縁坂と聞くと,私
の年代にとって,グレープ(さだまさし)の物悲しいメロディーである.小
説中の蕎麦屋は現在も営業しているが,観光客相手のようでお勧めできない.
現在の無縁坂:
http://www.silicontest.jp/mailmagazine/100430/muenzaka.htm
(岩崎一彦)

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