[2010-09-30] D&Tニュース 第41号

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月刊ディペンダビリティ&テスト(D&T)ニュース  2010年9月30日号
発信元 シリコン・テスト・テクノロジーズ株式会社
http://www.silicontest.jp/
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テスト技術用語集 http://www.silicontest.jp/abbreviations

--- 目次 -----------------------------------------------------------
●【ビジネスニュース】宇宙用FPGA,江戸・TOKYO技とテクノの融合展
●【最新技術動向】EDA Tech Forum
●【チュートリアル連載記事】ディペンダビリティ講座(第14回)福本 聡
●【編集後記】


---【ビジネスニュース】宇宙用FPGA-----------------------------------
半導体産業新聞 第1904号 2010年9月1日発行

半導体産業新聞によると,ザイリンクス社は宇宙用FPGA Virtex-5QVのサン
プル出荷を開始した.

同紙によると,同FPGAは地球周回衛星から惑星間周回をミッションとしたシ
ステムに求められる耐放射線環境向けに開発された.このFPGAは450MHzのシ
ステム性能で13万ロジックセルを備えている.

詳しくは同新聞を参照されたい.ホームページは以下の通りである.
http://www.semicon-news.co.jp/


---【ビジネスニュース】江戸・TOKYO技とテクノの融合展----------------
http://www.cgc-tokyo.or.jp/fair/outline.html

江戸・TOKTO技とテクノの融合展が,2010年9月14日に東京国際フォーラムで
開催された.4回目となる今回のテーマは”つたえる つながる つくりだ
す ~中小企業が未来をひらく~”であった.

企業ブースでは,伝統工芸(江戸漆器,江戸鼈甲,他)からソフトウェア
(組込み,WEB,他)にいたる174企業の出展があった.

支援機関では,首都大学東京他12機関の出展があった.

個人的には,プラモデルとその金型に魅かれた.
(某)


---【最新技術動向】EDA Tech Forum ---------------------------------
http://www.edatechforum.jp/index.html

2010年9月3日,東京六本木の東京ミッドタウンホールにおいて,EDA Tech 
Forum 2010が開催された.本イベントはEDAの最新技術の紹介を目的とした
フォーラムであり,今年は“未来設計 - 10X Productivity Increase”をテ
ーマに,フロントエンドデザインの最大活用,製造までの期間短縮,システ
ム設計の生産性向上,組込みソフトウェアとユーザ・インタフェース開発の
イノベーションの4トラックにおいて,計23件の発表が行われた.

メンターグラフィックスCEOのWalden C.Rhines氏により,"1000億トランジ
スタ・チップ"と題した基調講演があった.今後ますます複雑化,大規模化
するASICの効率的な開発において,システムレベル設計,機能および物理検
証の効率化および高速化,組込みソフトウェアの効率的な開発とリユース,
の重要性が示された.

テストに関連した話題としては,メンターグラフィックスによるメモリBIST
生成フローの紹介があった.また,リコーの直永卓也氏より,故障診断ツー
ルTessent Diagnosisの診断精度を発光/OBIRCH解析の結果に基づいて評価す
るという事例報告があった.さらに,ルネサスエレクトロニクスの吉岡信行
氏より,配線間のTDDB劣化性不良率をCritical Area Analysisを用いて予測
する手法について紹介された.
(新井 雅之)


---【チュートリアル連載記事】---------------------------------------
■ ディペンダビリティ講座(第 14 回) ■

前回は,線形符号のひとつである巡回符号を紹介しました.その利点は,復
号化におけるシンドローム計算を,フリップフロップで構成した簡単な順序
回路で実行できるというものでした.この回路は,いわゆる LFSR(linear 
feedback shift register; 線形帰還シフトレジスタ)と呼ばれるものです.
そして,巡回符号の検査行列の列ベクトルのならびには特別な規則があるこ
とを述べました.今回は,その特別な規則とはどのようなものか具体的に解
説します.そのためには,まず,群および有限体の話をする必要があります.

前回の (7, 4) ハミング符号と (7, 4) 巡回ハミング符号の検査行列を例に
して説明しましょう.いま,これらの行列を構成する7個の列ベクトルにベ
クトル (000)^T を加えた集合 S を考えます.便宜上,各元を行ベクトルに
置き換えて表示すると S は

{000, 001, 010, 011, 100, 101, 110, 111}

となります.このような集合に含まれる任意のふたつの元に対してある演算
を作用させて得られる結果が,またこの集合の元のひとつになっているとき,
この集合はその演算について“群”となっていると言います.つまり群とは,
集合と演算についての総合概念です.ただし,元 a, b, c に対して演算 * 
をa*b および a*c と作用させたとき,それらの結果が互いに異なる元とな
ることが保証されねばなりません.このような演算は“上への1対1写像”と
呼ばれます.なお,a*b = b*a, すなわち交換則がなりたつとき,その群を
“可換群”と言います.

上記の集合についての演算のうち最も基本的なものは,集合の元であるベク
トルの各成分同士の排他的論理和をとる演算です.演算結果は以下の表のよ
うになります.

http://www.silicontest.jp/mailmagazine/100930/GF_plus.htm

例えば,元 110 と 011 との演算結果が元 101 となることが直ちに解りま
す.これは,実数における通常の足し算に相当する演算であり,加法対応演
算といいます.表の,あるひとつの元とそれに対する各元との演算結果リス
トの行(または列)を見れば,この演算が上への1対1写像であることが確認
されますから,S は加法対応演算について群になっています.また明らかに
交換則が成り立ちますから可換群です.

この群においてさらに重要なことは,単位元と逆元が存在することです.単
位元は,いわばどのような元と演算させても値に変化をもたらさない元です.
また逆元は,演算結果が単位元となるふたつの元を相互に呼ぶものです.加
法対応演算について逆元が存在することは,その集合において減法に対応し
た演算も自由に行うことができることを意味しています.元 a から元 b を
引くことは a に b の逆元を加えることに等しいと定義できるからです.上
記の表から解るように,排他的論理和による加法対応演算では,単位元は 
000であり,任意の元 a の逆元は a 自身です.

つぎに,実数における掛け算に相当する演算,すなわち,乗法対応演算を集
合 S において定義しましょう.S の元はベクトルですから,掛け算には少
々特別な約束が必要になります.ふたつの元 a と b の積は,それらの成分
に着目した変換に基づいて定義します.元 a の成分を a_1, a_2, a_3とし,
元b の成分を b_1, b_2, b_3 とするとき,それぞれに対応する 2 次多項式
a_1*x^2 + a_2*x + a_3 および b_1*x^2 + b_2*x + b_3 を考えます.そし
て,それらの多項式の積を,ある特別な3 次の多項式 G(x) = x^3 + x^2 + 
1 で割った余りを計算します.さらに,その余りである 2 次多項式を構成
する三つの係数を取り出して成分としたベクトルを元 a と b の積とします.
ただし,多項式の計算では,係数の加減算はすべて mod 2 で考えます.
G(x) は既約多項式と呼ばれる多項式で,1 と,この多項式以外のどのよう
な多項式でも割り切れない多項式です.3 次の既約多項式にはもう一つ 
G(x) = x^3 + x + 1があります.こちらを使っても乗法は同様に定義できま
すが,個別の演算結果の対応は異なるものになります.なお,既約多項式は
自然数における素数に対応します.一般の次数 m の既約多項式は,素数が
そうであるように,計算機による探索的手法などによって見つけられます.

これらの定義によれば,例えば,元 101 と 011 の積を求めるには,まずそ
れらに対応する 2 次多項式 x^2 + 1 と x + 1 の積 x^3 + x^2 + x + 1 を
計算し,それを G(x) = x^3 + x^2 + 1 で割った余り x を計算します.こ
れを2次多項式と見れば 2 次,1 次,0 次の係数はそれぞれ 0, 1, 0 です
から,010 が求める掛け算の結果となります.それから,任意の元と元 
000 との積は 000 となります.また,任意の元 a と元 001 との積は a で
す.つまり,単位元は 001 となります.S のすべての元について乗法対応
演算を実行した結果を以下の表に示します.

http://www.silicontest.jp/mailmagazine/100930/GF_mult.htm

この表を使えば,乗法に関する各元の逆元を求めることができます.例えば,
元 110 の逆元は,積が単位元 001 となる演算相手ですから 010 であると
判ります.しかし,元 000 については,逆元が存在しないので注意が必要
です.これは,実数における乗算で 0 の逆元が存在しないのと類似してい
ます.000 以外の元については,S において割り算を自由に実行することが
できます.元 a を元 b で割ることは,a に b(!= 0) の逆元を掛けること
に等しいと定義することができるからです.

以上で述べたような加法対応演算と乗法対応演算の両方が成り立ち(ただし
0 に対応する元について,乗法に関する逆元の存在は要求しないものとし),
元の数が有限な集合は“有限体(またはガロア体;Galois Field)”と呼ばれ
ます.有限体では,基本的に加減乗除の四則演算を自由に実行することがで
きます.上記の S は,0, 1 の2元の成分を 3 個持つベクトルの集合である
ことから,特にガロア拡大体 GF(2^3)と呼ばれます.

さて,話をもとの巡回ハミング符号の検査行列に戻しましょう.検査行列 H
は,(7, 4) 巡回ハミング符号の場合,

1  0  1  1  1  0  0
1  1  1  0  0  1  0
0  1  1  1  0  0  1

でした.実はこれは,上記の拡大体 GF(2^3)の元の一つ 010 のべき乗を,
昇べきに,列ベクトルとして右から順に並べたものになっています.すなわ
ち,(010)^0 = 001 と定義して,

H = [{(010)^6}^T, {(010)^5}^T, {(010)^4}^T, {(010)^3}^T, 
{(010)^2}^T, {(010)^1}^T, {(010)^0}^T]

と表せるのです.ここで,010 は原始元と呼ばれる元で,そのべき乗で 
000 以外のすべての元を表現することができます.S の元では 000 と 001 
以外の6個の元すべてが原始元であり,何れもそのべき乗を昇べきに並べれ
ばそれぞれに上記とは異なる並びの行列が得られ,やはり,それは巡回符号
の検査行列となります.したがって,シンドローム計算では簡単な LFSR を
使うことができます.

<以下,次回に続く>
(福本 聡)


---【経済指標】-----------------------------------------------------
SEAJ BBレシオ 8月度:1.38
半導体製造装置協会から転載:http://www.seaj.or.jp/
月次経過:http://www.silicontest.jp/bbratio.htm


編集後記 -----------------------------------------------------------
2週間前まで30度を超える日が続いていたとは思えないほど,寒い日や雨が
続いております.当然,傘を持ち歩く機会も増えるのですが,不覚にも早速
1本忘れてしまったようです.みなさまも体調共々,お気を付けください。
(市野憲一)

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